人間は群れを成して社会生活を営む生き物ですから、客観的に口臭が認められないにもかかわらず、自分自身に口臭があると信じることは、つまり、社会生活をしていくうえで良好な人間関係を築くことに失敗した自分へのいいわけになっているのです。口臭のように他人との接触に直接影型を及ぼす要因になる人間心理の変化は微妙なもので、心身症の半分が口臭を訴え、性格的には几帳面、繊細、潔癖症の人がなりやすいのです。心身症のうち、特に、口のなかに原因があると思い込まれている方を口腔心身症と呼んでいます。
口腔心身症に行う心理療法では、たとえ患者様の訴えが医学的に矛盾していても、歯科医はこれを許容的に聞かなければなりません。そのうえで、検査結果の説明や類似症例の治療実績などを示し、患者様に自身の性格的傾向と症状との関係を理解させます。そして、症状改善の可能性を示し、励ましていくのです。やがて患者様は自らの力で症状をコントロールできることを知り、それが自信となって健康な社会生活へ戻ることが可能になるのです。
口のなかは、内面的な葛藤のターゲットとなりやすい場所ですから、歯科医は「口が渇く」 「頬がシビレる」「舌がヒリヒリする」「入れ歯が気になる」などといった違和感をしばしば 訴えられます。
原因が特定できないため、治療は困難と判断されがちですが、このような症状の多くは客 観的原因を伴わず、心理的なストレスが自らの身体に向かって放出された結果なのですから、的確な心のサポートを受けることによって治癒は可能なのです。
